ゴミ屋敷の片付けを決意した時、多くの人は目の前のゴミをどうやって捨てるかという物理的な問題にばかり目を向けがちです。しかし、その行動は根本的な解決にはなりません。なぜなら、ゴミ屋敷は「結果」であり、その背景には必ずそうなってしまった「原因」が存在するからです。その原因を調査し、理解しない限り、たとえ一度部屋をきれいにしても、高い確率で問題は再発してしまいます。本当の意味でゴミ屋敷から卒業するためには、物理的な片付けの前に、まず自分自身の心と向き合う「原因調査」が不可欠なのです。この調査は、決して自分を責めるために行うのではありません。むしろ、自分を責めるのをやめ、客観的に状況を理解し、適切な対策を立てるために行うのです。調査すべき項目は多岐にわたります。まず、心理的な要因として、最近、強いストレスや孤独感、大切な人やペットを失うといった喪失体験はなかったでしょうか。こうした出来事は、生きる気力を奪い、セルフネグレクト（自己放任）を引き起こすきっかけになります。次に、精神的な不調の可能性です。うつ病のように何もやる気が起きない状態が続いていませんか。あるいは、物を捨てることに極度の苦痛を感じる「溜め込み症」や、物事を順序立てて片付けるのが極端に苦手なADHD（注意欠如・多動症）といった特性が隠れている可能性もあります。これらは性格の問題ではなく、専門的な支援が必要な場合があります。さらに、身体的な要因として、病気や怪我で長期間動けなかったり、加齢によって体力が低下したりしていなかったかも振り返ってみましょう。これらの原因調査は、一人で行うのが難しければ、信頼できる家族や友人に協力してもらうのも良いでしょう。しかし、最も有効なのは、カウンセラーや医師といった専門家に相談することです。専門家は、あなたの話を傾聴し、問題の根本原因を整理し、回復への道を一緒に見つけてくれます。ゴミ屋敷という結果を生み出した原因を調査し、正しく理解すること。それが、自分自身を許し、再発の連鎖を断ち切るための、最も重要で最初の一歩なのです。