目の前に広がるゴミの山を前に、ただ闇雲に手を付けるのは、羅針盤を持たずに荒海に漕ぎ出すようなものです。ゴミ屋敷の片付けという困難な航海を成功させるためには、出発前の綿密な「現状調査」が絶対に欠かせません。この調査を怠ると、作業中に怪我をしたり、計画が頓挫したり、無駄な時間と労力を費やすことになりかねません。まず、何よりも優先して調査すべきは、「安全」に関わる項目です。ゴミの山には、私たちの想像を超える危険が潜んでいます。割れたガラスや陶器、錆びたカッターナイフ、中身のわからない薬品などが紛れ込んでいないか、注意深く確認しましょう。また、長年の湿気で床が腐り、踏み抜いてしまう危険性はないか。雨漏りなどで天井が傷んでいないか。建物の構造的な安全性をチェックすることも重要です。さらに、電気、ガス、水道といったライフラインの状況調査も必須です。タコ足配線やホコリを被ったコンセントは、漏電やトラッキング火災の原因となります。ガス漏れの危険性がないかも確認が必要です。安全が確保できる見通しが立ったら、次は「作業計画」のための調査に移ります。まずは、ゴミの種類と量の大まかな把握です。可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源ゴミ、粗大ゴミがそれぞれどのくらいの割合であるかを見積もることで、必要なゴミ袋の数や、粗大ゴミ処分の計画を立てることができます。そして、非常に重要なのが「搬出経路の調査」です。玄関からゴミ集積所までの通路は確保できるか、マンションの場合はエレベーターや階段を使えるか、大きな家具を運び出す際に障害となるものはないかなどを確認します。この調査に基づいて、必要な道具(マスク、手袋、台車、ほうき、ちりとり等)をリストアップし、準備を整えます。もし専門業者に依頼する場合でも、この事前調査で得た情報を正確に伝えることで、よりスムーズで的確な見積もりが可能になります。面倒に思えるかもしれませんが、この地道な調査こそが、安全かつ効率的に片付けを進め、挫折を防ぐための最も確実な道筋なのです。
ゴミ屋敷掃除の成功は「事前の現状調査」で決まる